和気町歴史民俗資料館コラムvol.5

 みなさん「黄谷(おうたに)の滝」ってご存知ですか?

 この滝は、和気町の東側を流れる日笠川の上流につながる支流「中の谷川」を約1kmさかのぼったところにあります。上流から2つの雌滝(落差約10m)と雄滝(落差約12m)からなる見事な滝で、滝の上にある深さ6mの甌穴状の滝壺が珍しいと言われています。また、綺麗で適度の水量をたもつ清流として、日笠川上流の「保曽峡」とともに平成9年に岡山の清流50選にも選ばれました。

 この滝には不思議な言い伝えがあり、鳥取県智頭にある滝と兄弟で、旱魃(かんばつ)の時に酒1升を持って智頭に行って滝に流し、その滝の水を持ち帰って黄谷の滝に流すと雨が降ったという話や、昔、滝を浴びてご祈祷をした僧侶の背骨の形が岩に残っているのだそう。『ふるさと和気』(平成2年和気町発行)によると、その言い伝えを信じてか、当時、実際に自転車で智頭まで行ったことのある古老がいたことも記されています。

 そして実は、和気町にはもうひとつの「黄谷」が存在します。

 それは、前回までコラムで紹介していた大國家の4代目当主大森武右衛門。彼は「黄谷(こうこく)」という号を持つ画人として活動していました。江戸時代後期に生きていた彼がこの滝を知っていたのか、逆に、彼に由来してこの滝の名なのか…事実は当時の和気の人々のみぞ知る、ですね。

 和気町にある同字異音のふたつの「黄谷」。

 はたしてこれは偶然の一致か!?

 調べてみるのも想像してみるのも面白いかもしれません。

 駐車場から渓谷沿いにおよそ500m、遊歩道も整備されているので是非訪れてみてはいかがでしょうか?